「毎月、試算表は税理士さんから受け取るんだけど、正直、数字を眺めて『ふーん』で終わっちゃってるんだよな…」 「利益が出てるか赤字かは分かるけど、じゃあ具体的に次に何をすればもっと良くなるのか、イマイチ分からない…」
中小企業の社長さんなら、こんな風に感じたこと、ありませんか? 決算書や試算表(これらをまとめて財務会計と言います)は、会社の健康状態を示す大事な成績表。でも、それだけを見ていても、「じゃあ、もっと健康になるために、どんな運動をすればいいの?」という具体的なアクションプランまでは見えてこないことが多いですよね。
そこで登場するのが「管理会計」です!
「カンリカイケイ…?また難しい専門用語が出てきたな…」
そう身構えないでください! 管理会計は、決して会計の専門家だけのものではありません。むしろ、会社の舵取りをする社長さん自身が、経営の『リアル』を掴み、的確な判断を下すための強力な武器なんです。
この記事では、
管理会計って、そもそも何?財務会計とはどう違うの?
導入すると、どんないいことがあるの?(中小企業にとってのメリット)
「難しそう」を解消!Excelでできる簡単な始め方
実際の会社はどう活用してる?成功事例
などを、難しい話は抜きにして、分かりやすくお伝えしていきます。「うちでもできそう!」「これは経営に役立つぞ!」と感じていただけたら嬉しいです。
すごく簡単に言うと、管理会計は「会社の経営をもっと良くするための、社内向けのオーダーメイド会計」です。
決算書などの「財務会計」は、銀行や税務署といった会社の外の人たちに「うちはこんな経営状況ですよ」と報告するためのもので、法律で決められたルールに従って作る必要があります。いわば、「年に一度の健康診断の結果報告書」のようなイメージ。過去の結果がまとめられています。
一方、「管理会計」は、社長や社員など、会社の中の人たちが「これからどうやって会社を良くしていくか?」を考え、判断するための情報です。決まったルールはなく、自社の目的に合わせて自由に設計できます。こちらは「より健康になるための、具体的なトレーニングメニューや食事プラン」に近いかもしれません。未来の行動を決めるための情報なんです。
中小企業は、社長の「勘」や「経験」ももちろん大事。でも、それだけに頼っていると、思わぬ落とし穴にはまることも…。管理会計を取り入れることで、データに基づいた客観的な判断ができるようになり、「勘や経験頼り」の経営から一歩抜け出すことができるんです。
「具体的に、管理会計を導入するとどんないいことがあるの?」
はい、たくさんありますが、特に中小企業の社長さんに実感していただきやすいメリットを3つご紹介します!
「うちはA事業が稼ぎ頭だと思ってたけど、ちゃんと計算したらB事業の方が利益率が高かった!」なんてことが起こります。どの商品がどれくらい儲けに貢献しているか(原価計算)、どの部門が頑張っているか(部門別損益計算)を把握できれば、力を入れるべきところに経営資源(人、モノ、カネ)を集中させる判断ができます。
「来年は売上〇〇円を目指すぞ!」という目標だけでは、具体的に何をすればいいか分かりにくいですよね。管理会計の手法である予算管理を取り入れれば、「目標達成のためには、毎月これくらいの売上と経費が必要だ」という具体的な計画が立てられます。社員さんとも目標を共有しやすくなり、モチベーションアップにも繋がります。
毎月、予算と実績を比較する(予実比較)ことで、「あれ?計画より経費がかかりすぎてるな」「このままだと目標達成が難しいぞ」といった問題点を早期に発見できます。また、「最低限どれだけ売上があれば赤字にならないか(損益分岐点)」を知っておけば、価格設定やコスト削減の判断もしやすくなります。問題が小さいうちに手を打てるのは、経営において非常に重要です。
「メリットは分かったけど、やっぱり難しそう…」
大丈夫です!最初から完璧な管理会計システムを構築する必要はありません。まずは、今あるデータとExcelを使って、簡単なところから始めてみましょう!
おすすめの「最初の一歩」4ステップ
過去の決算書や試算表を引っ張り出してきて、来月、3ヶ月後、半年後くらいの売上や主な経費(仕入、人件費、家賃など)の目標額(予算)を立ててみましょう。Excelの表計算で十分です!難しく考えず、「これくらいになったらいいな」という感覚でもOK。
月が終わったら、実際の数字(実績)と予算を比べてみましょう。「売上目標達成!でも、広告費が予算オーバーだな…なぜだろう?」こんな風に、予算と実績の差(差異)がなぜ生まれたのかを考えることが、管理会計の第一歩であり、一番大切なポイントです。
商品やサービスにかかる直接的なコスト(変動費)と、売上に関係なくかかるコスト(固定費)をざっくり分けてみましょう。そうすると、「あといくら売れば赤字にならないか(損益分岐点)」が見えてきます。これもExcelで簡単な計算シートが作れますよ。
会社全体の数字だけでなく、事業部や店舗ごとに売上や経費を集計して、どこが儲かっていて、どこが課題なのかを見てみましょう(部門別損益計算の簡易版)。これもExcelで集計できます。
★さらに本格的にやるなら… 最近の会計ソフトには、予算管理や部門別損益計算などの管理会計機能が充実しているものも多いです。Excelでの管理に慣れてきたら、会計ソフトの活用も検討してみると、さらに効率的に管理できるようになりますよ。
「自分でExcelシートを作るのはちょっと…」という方は、テンプレートを活用するのも手です。
インターネットで**「予算管理表 テンプレート Excel」「損益分岐点 分析 シート 無料」**といったキーワードで検索すると、すぐに使える便利なテンプレートがたくさん見つかります。
ただし、テンプレートはあくまでひな形。ダウンロードしたら、ぜひ自社の状況に合わせて項目を追加したり、計算式を修正したりして、**「自社だけのオリジナル管理会計ツール」**に育てていってくださいね。
最後に、管理会計をうまく活用して経営を改善した中小企業の(架空の)事例をご紹介します。
悩み: 長年作っている製品がたくさんあるが、どれが本当に儲かっているのか分からなかった。
やったこと: 製品ごとに材料費や加工時間をきちんと把握し、正確な原価計算を実施。
結果: 実は赤字だった製品を発見し、思い切って生産中止。利益率の高い製品に注力した結果、会社全体の利益が大幅に改善した。
悩み: 全体の売上は悪くないが、店舗によって利益にバラつきがあった。
やったこと: 店舗ごとに月次の予算(売上、原価、人件費など)を設定し、店長会議で予算と実績の差異分析と改善策を話し合うようにした。
結果: 各店舗の店長にコスト意識が芽生え、成功事例を共有することで、不採算店舗の収益性も向上した。
悩み: 新しいサービスを始めたが、価格設定に自信が持てず、赤字が続いていた。
やったこと: 損益分岐点分析を行い、「最低これだけの契約数を獲得しないと赤字になる」というラインを明確にした。
結果: 目標達成のための具体的な営業計画を立てられるようになり、価格設定も見直した結果、3ヶ月で黒字化を達成できた。
いかがでしょうか?管理会計が、具体的な経営改善に繋がっているイメージが湧きましたか?
管理会計は、決して難しい専門知識の塊ではありません。社長が会社の現状を正しく理解し、自信を持って未来への舵取りをするための、頼れる「参謀」のようなものです。
財務会計(決算書)という過去の結果を見るだけでなく、管理会計という未来を照らす道具を手に入れることで、経営の精度は格段に上がります。
「よし、うちもまずは簡単な予算管理から始めてみようかな」 「Excelテンプレートを探して、損益分岐点を計算してみよう」
そう思っていただけたら、これほど嬉しいことはありません。
大切なのは、完璧を目指さず、まずはできる範囲で始めて、そして継続すること。ぜひ、管理会計をあなたの会社の「強い経営」のために役立ててください!